腹腔鏡手術とは?

腹腔鏡手術とは小さな切開創より内視鏡や内視鏡外科専用鉗子を挿入してモニターに映し出される画像を見ながら行う手術方法です。お腹を大きく開けずに手術や検査ができるので動物への負担が少なく体に優しい手術方法です。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術のメリット

  1. 傷が小さいので痛みが少なく麻酔からの覚醒や回復が早い。例えば避妊手術では傷が小型犬で数cmから、大型犬では10cmを超えますが腹腔鏡手術で5mmの傷2~3箇所で済みます。
  2. 手術によっては当日夜から食事可能
  3. お腹を開けないため臓器の乾燥や癒着を防ぐことができ臓器にも優しい手術
  4. モニターを通して拡大された画像を見ながら手術するので臓器や血管がよく見え、術者だけでなく手術に携わる全員で術中情報が共有でき、より安全に手術することが可能

開腹による避妊手術の傷口

開腹による避妊手術の傷口

腹腔鏡下避妊手術の傷口

腹腔鏡下避妊手術の傷口

腹腔鏡手術のデメリット

  1. 習熟した手技が必要となる
  2. 手術時間の延長
  3. 手術費用が開腹手術に比較して割高

腹腔鏡でできる検査・手術

避妊手術

膀胱結石摘出

お腹に2〜3箇所の小さな傷を作成し、そこから卵巣、もしくは卵巣子宮を取り出すことができます。開腹手術だと卵巣堤索を体外へ引き出すために強い痛みを伴いますが、腹腔鏡下で行えば体腔内で処理できるため術中の痛みも殆どなく、卵巣動静脈のような太い血管もカメラ越しに確認できるためより安全に血管処理することが出来ます。

腹腔内潜在精巣摘出

潜在精巣(陰こう)とは本来陰嚢内に降りてくるはずの精巣が鼠径部や腹腔内に留まってしまう状態を言います。潜在精巣は将来的に腫瘍化することがあるため手術により摘出する必要があります。潜在精巣は腹腔内のどの位置にとどまるか分からないので、従来は探索するために傷を大きく開ける必要がありました。当院ではCT撮影を行い潜在精巣の場所を確定した後、お腹に小さな傷を数カ所開けて腹腔鏡下にて確実に取り出しています。

膀胱結石摘出

膀胱結石摘出

動物の膀胱結石は非常に多く、フードで溶かす事が出来ない結石や数が多い場合は手術で取り出す必要があります。結石の数が多い場合、開腹手術だと取り残しの可能性もありますが腹腔鏡下で行うと膀胱内部を鮮明に映し出すことができるため取り残しのリスクを抑えることが出来ます。また、膀胱切開自体も小さい傷で済むため癒着のリスクを抑えることも出来ます。

組織生検(肝臓・膵臓・腎臓・膀胱・腸管)

組織生検

病気の種類によっては血液検査やエコー、レントゲンでは分からないこともあります。そのような時は臓器内でどのような変化が起きているかを調べるために組織生検を行い病理学的に診断する必要があります。従来は開腹手術により肝臓や腸管、膵臓の生検を行っていましたが腹腔鏡下で行うことにより低侵襲で検査することができ、その結果を治療につなげることが出来ます。多くの飼い主様は検査のために開腹することに抵抗を示されますが、腹腔鏡下生検の場合、小さい傷2〜3箇所で済むため同意していただくことが多いです。

予防的胃固定術

胸の深い大型犬種に起こりやすい致命的な病気として胃拡張捻転症候群(GDV)があります。胃拡張が悪化して捻転し、血液循環ショックを起こし致死的な不整脈や臓器壊死を起こします。GDVと診断したら緊急手術を行いますがそれでも死亡率が高く救命するのが難しい病気です。予防的胃固定を行うことでGDVの死亡率を大幅に下げることが出来ます。

腹腔鏡手術について詳しく知りたい方はお気軽にお電話ください。